2018年1月から新たに始まった「つみたてNISA」はこれまでのNISAと違い、初心者にも利用しやすい制度として非常に注目を集めています。
しかし、NISAとはどのような違いがあるのか、しっかりと把握している人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、つみたてNISAがどのような制度なのか分かりやすく解説しています。
これまでのNISAとの違いや利用の際の注意点もご紹介しています。
また、つみたてNISAとよく似た制度のiDeCoとの比較もしているので、つみたてNISAの利用を考えている人は、ぜひ参考にしてください。
もくじ
そもそも「NISA」ってなに?
NISAとは、株式投資や投資信託で得た利益に対して税金がかからない制度です。
投資で発生した利益に対しては、本来は約20%もの税金がかかるので、NISAを利用することで、かなりの節税になります。
非課税となる利益は無制限ではなく、毎年最大で120万円で、期間は最大5年間です。
期間は、非課税期間の延長(ロールオーバー)をすることで、最大10年まで伸ばせます。
そして、NISAには、通常の「NISA」を含め、全部で3種類あります。
未成年者を対象にした「ジュニアNISA」と、今回詳しく解説していく「つみたてNISA」です。
ジュニアNISAは、0歳から19歳の人を対象にしたNISAで、期間が最大5年で年間80万円までの投資が可能となっています。
対象の年齢と18歳までの引き出しの制限があること以外は、基本的にNISAと同じ制度です。
では、次からつみたてNISAについて詳しく解説していきます。
「つみたてNISA」とは
つみたてNISAは、継続的に積み立てていくことを目的としています。
非課税になる金額も通常のNISAとは異なり、毎年最大で40万円で、最大20年と長期間です。
詳しくは後述しますが、投資対象も通常のNISAとは違い、長期間の運用に最適な投資信託とETFに限定されています。


商品が限定されていますし、継続的なつみたて投資ができるため、リスクを抑えて確実に積み立てて資産形成ができます。
投資が初めての初心者やNISAを始めて上手く使えなかった人には、利用しやすい制度となっています。
「NISA」と「つみたてNISA」の違い
通常のNISAとつみたてNISAには、以下のような違いがあります。
NISA | つみたてNISA | |
利用できる人 | 日本在住の20歳以上 | |
開設可能な口座数 | 1人1口座 | |
非課税投資枠 | 年間120万円 | 年間40万円 |
期間 | 5年間
(ロールオーバーで最大10年間) |
20年間 |
投資可能な期間 | 2014〜2023年 | 2018〜2037年 |
対象の金融商品 | 株式・投資信託・ETF・REIT(不動産投資) | 投資信託・ETF |
非課税投資枠はNISAが年間120万円、つみたてNISAが年間40万円と、年間80万円の差があります。
期間もつみたてNISAは最大20年間、NISAは最大5年間と異なります。
年間ではNISAのほうが運用できる金額は多いですが、最終的な金額はつみたてNISAのほうが多くなります。
そのほかに注目したいのは、対象の金融商品です。
NISAは、株式やREITなど幅広い金融商品から選択できます。
それに比べてつみたてNISAは、金融庁が定めた要件を満たした一部の投資信託とETFに限られています。
また、どちらも投資可能な期間が決まっており、この期間を越えてしまうと商品を新たに購入ができなくなります。
例えば、つみたてNISAを2025年から始めた場合、新しく購入できるのは2037年までの13年間になります。
投資可能な期間を過ぎると、保有は可能でも新たに購入ができないので、注意しましょう。
「つみたてNISA」のメリット
つみたてNISAには主に、
- つみたてNISAの利益に税金がかからない
- 毎月コツコツつみたてができる
- いつでも引き出しが可能
- 商品が厳選されていて初心者でも選びやすい
- 運用できる金額が大きい
の5つメリットがあります。
どれも投資を初めてする初心者には、大きなメリットになっています。
次から詳しく解説していきます。
メリット1.つみたてNISAの利益に税金がかからない
冒頭でも少し触れましたが、NISAとつみたてNISAともに、それで発生した利益に対して税金がかかりません。
その他の株投資や投資信託の場合では、その利益に対して約20%を税金として納めなくてはいけないため、投資の中でも節税効果があるものとなります。
たとえば、20万円の利益が出ているケースを考えてみます。
この場合の手元に残る利益は、それぞれ以下のようになるということです。
■ 株投資や投資信託の場合
(税金)20万円の利益 × 約20%=約4万円
→ 約16万円が手元に残る
■ つみたてNISA・NISAの場合
税金は0円
→ 20万円がそのまま手元に残る
メリット2.毎月コツコツつみたてができる
つみたてNISAは、その名の通りつみたて投資に限定されているNISAなので、継続して購入するのが前提です。
つみたてをする頻度も、
- 毎日
- 週に1回
- 月に1回
- 2ヶ月に1回
など、自由に設定することも可能となっています。
投資では、どのタイミングで購入するかが非常に難しいですが、つみたて投資なら設定したタイミングで自動購入してくれます。
手間もかかりませんし、感情に流されずに確実に資産を増やしていけます。
また、つみたてNISAで選べる金融商品は、基本的に分散投資をする商品です。
分散投資では、長期間の投資をすることで、元本割れの可能性を低くできます。
確実に積み立てて資産を増やせて、頻繁に取引画面を見る必要もなく、元本割れのリスクも少ないので、つみたてNISAは初心者におすすめな投資方法です。
メリット3.いつでも引き出しが可能
つみたてNISAは、20年間ずっとつみたてしなくてはいけないわけではありません。
マイホームの購入や結婚などに合わせて、途中で引き出すこともできます。
よく似ている制度に、個人型確定拠出年金の「iDeCo(イデコ)」があります。
■ iDeCoとは
iDeco(イデコ)とは、老後のための資金を自分自身で積み立てていく制度のことです。
「iDeCo?詳しく聞かせて!」
という方は、以下の記事を参考にしてみましょう。

iDeCoとは細かな部分に違いはありますが、長期間のつみたてをしていくという点では同じです。
しかし、決定的に違うのが、iDeCoは原則60歳まで引き出しができないことです。
いつでも引き出せるのは非常に大きなメリットになります。
20代で職業や収入が安定していない人や、気軽につみたて投資を始めてみたい人にも最適といえます。
メリット4.商品が厳選されていて初心者でも選びやすい
通常は投資信託やETFでつみたて投資をする場合、数千本の商品から長期間の運用に最適なものを選ぶ必要があります。
つみたてNISAなら購入できる投資信託やETFは、金融庁によって厳選されたものです。
- 販売手数料が0円
- 信託報酬が低い
- 分配金の支払い頻度が少ない
などの一定の要件をクリアしたうえで選ばれています。
そのため、どれを選んでも長期間の運用に最適で、リスクが抑えられた商品となっています。
厳選されているからといって必ず利益が約束されているわけではありませんが、初心者には購入しやすいでしょう。
メリット5.運用できる金額が大きい
短期間で投資できる金額は小さくなりますが、つみたてNISAは年間40万円で最大20年間なので、最終的には最大800万円にもなります。
NISAは年間120万円で最大5年間なので、最終的な運用額は最大600万円です。
単純に200万円多いため、最終的に運用できる額はNISAも大きくなり、節税効果はNISAよりも大きいです。節税効果を高めるならつみたてNISAをおすすめします。
「つみたてNISA」のデメリット
メリットも多いですが、デメリットもあります。
主なデメリットは、
- 短期間では大きくつみたてできない
- 選べる商品が少ない
- ほかの商品への乗り換えができない
- NISAとつみたてNISAの併用はできない
- 損益通算が対象外となる
の5つです。
これらも考慮したうえでつみたてNISAでの運用を検討していきましょう。
デメリット1.短期間では大きくつみたてできない
運用ができる期間が20年と長いですが、NISAと比べると年間40万円しか運用できません。
最終的な運用金額はつみたてNISAのほうが多いですが、年間では、NISAよりも少なくなってしまいます。
コツコツと確実に積み立てていくのが、つみたてNISAの特徴なので、短期間で大きく投資したい場合はNISAのほうがいいでしょう。
デメリット2.選べる商品が少ない
つみたてNISAで購入できる商品は、金融庁が厳選した一部の投資信託やETFです。
株式やREIT、決められた商品以外の購入はできません。
商品の選択が上手くできない初心者にとってはメリットになるのですが、投資の経験があり、自由に商品を選択したい人には大きなデメリットになります。
短期間でも、しっかりと運用益を出せる人は、年間120万円の非課税投資枠があり、自由に商品を選べるNISAをおすすめします。
デメリット3.ほかの商品への乗り換えができない
基本的には運用の途中にほかの商品に乗り換えることはできません。
ルール上は、できないというわけではないのですが、乗り換えるためには、それまで積み立てた商品を売却する必要があります。
しかし、売却してしまうと、売却分の非課税投資枠がなくなってしまいます。
つみたてNISAは長期間運用していくのが目的なので、乗り換えをするのはマイナス面のほうが大きくなってしまいます。
似ている制度のiDeCoでは、手数料はかかりますが、非課税投資枠を減らすことなく商品の乗り換えが可能です。
ただし、つみたてNISAで購入できる商品は、金融庁が厳選した商品なので、リスクも抑えられています。
そのため、そもそも乗り換える必要がないことがほとんどです。
それでも、自由に乗り換えができるiDeCoと比べてしまうと、デメリットになってしまいます。
デメリット4.「NISA」と「つみたてNISA」の併用はできない
つみたてNISAは、NISAとの併用はできません。自分に最適なのが、どちらか決めたうえで運用をスタートしましょう。
ただ、切り替えは可能なので、現在NISAの口座を保有している方でも、つみたてNISAに変更することはできます。
つみたてNISAとNISAのどちらも1年単位での購入になるので、切り替えは年に1回しかできません。
デメリット5.損益通算が対象外となる
これはつみたてNISAに限らずNISAについても、株投資や投資信託ならできる「損益通算」ができません。
冒頭でもお伝えしたとおり、つみたてNISAとNISAは利益に対して税金がかからない分、損失に対しても損益通算ができないのです。
これで困るケースは、主に以下の2つの条件に当てはまるときとなります。
- 取引を通常口座で行い利益が出ている
- NISAを活用しているが損失が出ている
これらの条件に当てはまる場合は、「1」の利益を減らすことができないので注意しておきましょう。
まず投資で得た利益に対しては、利益に対して約20%の税金を支払う必要があります。
ただ、投資をしていると損失を出すこともあるでしょう。
損益通算とは、この利益と損失を通算することです。例を見てみましょう。
■ 10万円の利益、4万円の損失の場合
(計算例)10-4=6万円の利益
損益通算すれば、利益が縮小されるため、支払う税金も減るということです。
つみたてNISAとNISAどっちが得?
どちらを選べばいいかは、何を目的としているのか、どの程度の投資スキルがあるのかによっても、人によって異なるでしょう。
ここでは、それぞれに合っている人はどういった特徴をもつ人なのか、その点を以下にまとめておきます。
それぞれの特徴は、おおむね以下のような感じになるでしょう。
■ つみたてNISA向きの人
- 手堅く長期的に運用したい人
- 投資の初心者
- NISAをやってみたけど結局上手く利用できなかったという人
■ NISA向きの人
- 短い期間で大きな金額を投資したい人
- 知識や経験がある人
- 株式やREITでも取引したい人
つみたてNISAでは、個別株を購入することはできません。
どうしても商品を選ぶ際には、不自由を感じてしまうものです。
ただその代わりとして、「利益は少ないけどリスクは低い」という手堅い商品がそろっているわけです。
結局のところ、どちらが優れているというわけではないので、どちらもメリットとデメリットをしっかりと把握したうえで、自分に最適な運用方法を選びましょう。
iDeCo(イデコ)との併用は可能
つみたてNISAとNISAの併用はできませんが、iDeCoとの併用は可能です。
つみたてNISAとiDeCoは違いはありますが、長期間の運用をメインにしている点では、非常に似ている制度になっています。
2つを併用すれば、非課税投資枠の上限をアップできます。
資金に余裕があって、つみたてNISAとiDeCoのどちらかだけでは枠が足りない人には、併用は有効な手段です。
また、iDeCoにはつみたてNISAにはないメリットもあります。
次からそのメリットと違いについて解説していきます。
「つみたてNISA」と「iDeCo(イデコ)」の違い
長期間のつみたて投資ができて、運用益に課税されないという共通点はありますが、異なる点も多くあります。
つみたてNISA | iDeCo | |
利用できる人 | 20歳以上 | 20歳以上、60歳未満 |
非課税投資枠 | 毎年40万円 | 毎年14万4,000円〜
81万6,000円 |
期間 | 20年間 | 60歳まで |
引き出し | いつでもできる | 60歳までできない |
対象の金融商品 | 投資信託・ETF | 投資信託・保険・定期預金 |
所得控除 | なし | あり |
まずiDeCoは60歳未満の人を対象にした制度なので、60歳以上の人は利用できません。
60歳以上の人でつみたて投資を利用するなら、つみたてNISAがおすすめです。
非課税投資枠を比べていくと、iDeCoは職業や加入している公的年金によって変わってきます。
人により投資できる金額が変わり、公務員などでは最大でも月1万2,000円となっています。
期間は基本的には、開始してから60歳までのため、始めるのが早ければつみたてNISAの20年間よりも長い期間の運用が可能です。
ただし、つみたてを開始してしまうと原則60歳までは引き出しができません。つみたてNISAはいつでも引き出しができるので、急遽お金が必要になったときでも柔軟に対応できます。
そしてiDeCoの最大のメリットといえるのが、運用益だけではなく、投資した資金の全てが所得控除の対象になります。
つみたてNISAと比べると、節税効果が非常に高いです。
60歳まで引き出せませんが、節税効果が高いため、運用資金を60歳以降に老後の生活資金として使うならiDeCoがおすすめです。
しかし、職や収入などが安定していない場合や、マイホームの購入などの予定があるなら、いつでも引き出せるつみたてNISAがいいでしょう。
この2つは併用できるので、iDeCoで老後の資金を貯めながら、つみたてNISAでいつでも引き出せる資金を運用していく、といった方法もあります。
また、iDeCo利用の注意点として覚えておきたいのは、口座開設と口座管理の手数料がかかることです。
口座開設は一度の支払いで済みますが、管理手数料は最低でも毎年2,777円かかります。
それほど大きな金額ではありませんが、数十年と運用するうえでは重要なので、注意しましょう。
自分に合った「NISA」を活用して上手に資産運用をしよう
NISAとつみたてNISAの非課税投資枠や期間、金融商品などの違いついて解説しました。
また、類似している制度のiDeCoについても比較をしてきました。
つみたてNISAは長期間の運用に最適ですが、選択できる商品の幅が狭かったり、NISAとの併用ができないなどの注意点もあります。
また、節税効果からみるとiDeCoを選択したほうがいい場合もあります。
そういった違いや注意点などを含めて、ぜひ今回の記事を参考にして自分に最適な制度を利用していきましょう。